▼『素晴らしい世界』浅野いにお たまーにさァーとなるカンジ

"素晴らしい世界" 1巻
浅野いにお
Japan(2003)
Official Web


「俺、憂い夕暮れに たまーにさァーとなるカンジ」

 若い作家のデビュー短編集。作品のいくつかは、自分の居場所の無さとか、生きる事への不安とかそういった若い悩みを描き、それを大人を愚者にする事で相対的に浮き彫りにする。そして彼らは内傷したり事件に遭って、なんとか生きる意味をおぼろげに感じ取る。

 ここにあるのはリアルなのか、それとも単なる感傷なのか。登場人物の中に自分とシンクロするものがいると、それはとてつもないリアルとしてやって来て感情を揺さぶる。しかし、シンクロしないと鼻につくのも確かだ。それもリアルさだといえるのだけど。

 登場人物たちがその後の回に少しずつリンクして描かれていく構成が素晴らしい。

 結局私が読んで思ったのは、人の痛みは比べられるものでは無い。いくら自分がどんなに辛いと思っても、他人は同じ悩みをそれほど辛いとは思わないかも知れないし、その逆だって有り得る。そんなみもふたもない当たり前の事を改めて感じたのでした。あ、それと自分の感性と感受性の薄さも実感してしまった…

浅野いにお
コミックス: 素晴らしい世界 1巻
コミックス: 素晴らしい世界 2巻
コミックス: ひかりのまち