▼「ディボース・ショウ」で、どーでしょう

"Intolerable Cruelty"
Joel Coen
USA(2003)
Official Web

 コーエン兄弟の映画らしくなく、セレブしか出てこない。『ビッグ・リボウスキ』、『ファーゴ』辺りが彼らの最高傑作だと思うけど、他の作品も常に高水準で楽しめる。本作もかなり楽しめるコメディだった。

 離婚訴訟専門の弁護士と、財産目当てで金持ちとの結婚を繰り返す女詐欺師との騙しあいの物語。アメリカならではの訴訟劇とでも言えばいいのでしょうか。ジョージ・クルーニー、キャサリン・ゼタ=ジョーンズを主人公にしたスター映画だが脇役の役者がどれも素晴らしく花を添えている。

 ジョージ・クルーニー扮する離婚訴訟専門の弁護士は凄腕で、勝ち目のないと思われる訴訟も必ず勝ちに持ち込む。彼は女性相手には白い歯を武器にしている。どんな弱腰な依頼人も自慢の白い歯を見せれば、安心し彼を信頼する。しかしその歯の魅力がストレートに通じなかったのがキャサリン・ゼタ=ジョーンズであって、だから彼は彼女に恋してしまう。モテモテの美男美女のありがちの、他人が自分の魅力に惑わされる事が普通であるために、そうならなかった相手に興味が湧いてしまう話はよくある。しかし、私的にはもてない、さえないヤツが奮闘する物語の方が好きだ。セレブな連中にはいまいち感情移入し難いので、どちらが勝とうが、あるいは幸せになろうがいいと思ってしまう。

 私は結婚にとって一番大切なのは信頼関係なんだと思ったりする柔な人間であるのだけど、信頼関係って何処で発生するものなのかなって考えてしまった。もちろん男女の間では本当の信頼関係なんて幻想かもしれないが、たとえかりそめでも信頼できるかって事が一番の幸せにつながるのかなと思う。

 信頼関係を維持するのにある程度のお金は絶対に必要だ。しかしそのお金も程度をすぎると信頼関係を壊す原因になる。

 この映画では騙し騙されて行く中で信頼を得たのであろうか? この映画が終わった後も二人はお金を巡るゲームを続けて行くのでしょうけどね。

 原題は"Intolerable Cruelty"で「耐えられない残酷」という意味。この映画に出てくるセレブ連中にとって、財産を持っていかれるほど残虐な事は無いのであろうけど、本当の「耐えられない残酷」さってこんなものではない事は確かだ。だからこのタイトルは自分とは関係の無い世界であたふたする人間を見て笑う映画なのだという事を意味しているのかもしれない。もちろんこの映画を見て笑えない人たちもいるのでしょうが、そんな連中の事は知った事ではない…

DVD: ディボース・ショウ