★フジロック'05日記 三日目後編

三日目前編

 実はRoyksopp終了後、レッドのThe

CoralとホワイトのThe

Mars Voltaのどちらを見るかで迷いがあった。

The Coralは曲も知っているし、"Skeleton Key"はThe Pogues"Fiesta"、SOUL

FLOWER UNION"海行かば 山行かば 踊るかばね"と並ぶお祭りソングなので、「お祭りソング三部作」としてまとめるという手もある。しかしその次はホワイトステージでSigur

Rosである。彼らは私にとって今回最大の目玉で、ライブ見るのが念願だった。このバンドを中心に今回のフジロックの計画が立てられていたと言っても過言ではない。The

Coral終了後、グリーンのNew Orderを横目にホワイトへ向かっても、時間は一時間近くある。しかし、しかしだ、Sigur Rosだ。フジ初だ。被っているバンド、New

Order、PRIMAL SCREAMはフジ初ではない。そしてアナウンスによると今年は今までで最大の動員数らしい。もしSigur Rosのホワイトステージに人が集まりすぎて、入場制限がかかってしまったら… そう考えるとSigur

Rosまえのレッドマーキーは危険である。ここは同じホワイトステージでやるThe Mars Voltaをみてそのまま残っていた方が安全では無いか? でもThe

Mars Voltaは曲を一度も聴いた事が無い。前身だったAt The Drive-Inをほんのちょっと知っているくらい。ただなんとなくステージはすごそうだという感じがあった。メンバーはアフロの二人だし。

  ホワイトに入場制限がかかってしまうかもという心配は、取り越し苦労かもしれないが、初日からThe CoralThe Mars Voltaのどちらを見るかで迷い続けていたのです。そしてここに来て「やはり早めにホワイトに行ってThe

Mars Voltaを見よう」と思い立ったのです。

 

この決断が後に大きく作用する事となる。人生の流れに影響を与えるくらい大きく。

 そんなわけで、レッドを後にしてホワイトに向かいました。もう日も暮れていてフジロック最後の夜の始まり。

 

途中グリーンでMobyが偶然Radioheadの"Creep"を歌ってました(一部だけだったけど)。まぜでしょう?

 この時昼間は降っていなかった雨が大量に落ちてきていました。結局三日とも一度は大雨にあう。ホワイトへ向かう道は大混雑。なかなか進みません。で、未だに混雑していても傘を差している客がいたのには驚いた。すぐ前に二人も大学生風の男が傘を差していて邪魔でだった。これだけの混雑で傘を差していると、周りからかなり軽蔑の目で見られていると思うがそれに気づかない悲しさ…

 ホワイトに着いてすぐにカロリーメイトポカリスエットを買った。まだ腹は減ってないけど、昨日の失敗を繰り返さないようにと思って。

 The

Mars Volta待ちの間、相変わらず雨はすごい。ステージの上にはオレンジのアンプが四つも置いてある。それからして何か異様な雰囲気である。楽器関係には疎いので、同じアンプが四つある事の意味とかサッパリわからないけど、なんか異様だった。そして開演直前になって、大降りだった雨がパタリと止んだ。この、開演前になって雨が止むという偶然からして、この後のステージの凄まじさを暗示していたと思う。

 The

Mars Volta登場。ヴォーカルのセドリックとギターのオマーがドラムの方を向いてを取り囲むように並ぶ。そして強烈なドラミングが始まる。ものすごいパワーでドラムを叩く。ドラムが壊れてしまいそうだ。しかしペースを落とさずに叩き続ける。そのドラムにオマーがギターかき鳴らすようにして合わせる。セドリックは合間にシャウト。決してスピードが速いわけではない。しかしものすごい混沌のパワー! 身体が打ち震えてしまう。「打ち震える」という言葉はこの時のために存在していたのだ。圧倒される。ここには究極のLiveがあった。昔、お台場であった"Natural

High"というイベントで始めてボアダムスを見た時の衝撃に匹敵する。抑えられない衝動、目がくらむ、力強く激しい。The

Mars Voltaは圧倒的な音楽のパワーで周りを巻き上げていってしまう竜巻! エロティックに腰をくねらすように、静かにツイストしながら破壊する竜巻だ。

 ここまでくると、「ミュージシャンと客の一体感」とか、そんな事は戯れ言のようだ。「The

Mars Voltaにどこまで客がついてこれるか」である。

 最後オマーはギターをほうり出し、セドリックはマイクスタンドをへし折って退場。竜巻の通った跡が残される。そして竜巻は雨雲をもけ散らしていたのだ。

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 三日間の間、いろんなステージを見てきた。あれだけ興奮して楽しい思いをしてきても、それをはるかに上回るステージがまだあったりする。音楽のすごさ。ライブのすごさを痛感。一番の期待だったSigur

Rosをまだ見る前から、今年のフジロックの個人的ベスト1はThe

Mars Voltaに決定。

 私にとってSigur

RosMogwaiと並んで、ここ数年で最もお気に入りのバンドだ。昨年朝霧JamMogwaiのステージが野外で見られたし、今年はSigur

Rosが野外で見られる。なんという幸運でしょう。

 Sigur Rosのヨンシーはチェロの弦でギターを弾く。そして裏声で歌う。繊細そうできゃしゃな彼が裏声を出す時は顔をくしゃくしゃにする。そんなヨンシーを間近で見られるチャンスなどそうないのではないか? そう思ったのでThe

Mars Volta終了後すぐに人をかきわけて前へ行く。ステージ中央、前から二列目で、何の遮りも無くヨンシーのマイクスタンドが見られる位置をゲット。私の場合、込み合って身動きがとれない前には、あまり行く事が無い。身体をうごかしながら音楽を聴いている方が好きだからだ。しかしSigur

Rosは音楽にのって身体を動かす必要が無いので、めずらしく前に行ってしまった。

 高校生のころは好きなバンドのライブが始まる前はすごくドキドキして興奮してしまったものだった。今はステージにミュージシャンが出てきて、演奏が始まってからでないと興奮しなくなってしまった。だから立って待っている間に立ち寝などしてしまうのだけどね。しかしSigur

Rosの前だけはドキドキしてしまった。うれしい。

 ステージ前に薄い白幕が張られていてその後ろにメンバー登場。照明が後ろから当たって白幕にシルエットが浮かび上がる。そして演奏が始まる。見事な演出。一瞬にしてステージの観客はみんな幻想的な雰囲気につつまれたと思う。

 しばらくして幕が開きメンバー全員見える。近くで見るヨンシーは、やっぱりきゃしゃで繊細そうに見える。顔をくしゃくしゃにして歌う。

 ステージはとてもキレイで優しい感じだった。CD聴いている時に観じられた不安な感じとか、そういったものよりもはるかに優しく包み込むような音だった。途中ヨンシーがギターのマイクロフォン部分に向かって歌ったりと、それが単なるパフォーマンスなどで終わらず、美しい楽曲にきれいにはまる。

 

現実だったのか? 夢なのではないか? 今思い返すとそんな感じのステージ。

 ただ後悔した事は前列で見てしまった事。このライブは真ん中やや後方辺りから、ホワイトステージを見渡せるような場所で、全体の雰囲気も含めて見るべきではなかったのか? それだけが心残り。まあそれはWOWOWの放送を見て確認しよう。

 新曲も何曲かプレイしたが、これがどれも名曲で、秋ごろ出る予定のニューアルバムがすごく楽しみだ。フジの最終日ホワイトに個人的ベスト1とベスト2が揃いました。

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 フジロックのホワイトステージの最後にSigur Rosを置いたのは本当に成功。こんなに素晴らしい位置は無いと思う。しかし、しかし、グリーンステージではPRIMAL

SCREAMがもう始まっているんです。当然渋滞でホワイトは出るのに時間かかるし、どのくらい見られる事か… とにかく脇の整地されていないところを抜けて急いでグリーンは向かいます。私の場合、前のステージの余韻に浸っている事などあまりない、せわしいヤツです。泥の道にもすっかっり慣れてしまったね。

 グリーンに着くと、ちょうど"ジェイルバード"が始まりました。PRIMAL

SCREAMは青春時代にすごくはまったバンドで、初来日公演の渋谷クラブクアトロの時から見ていて、合計20回以上はライブ見ています。でも最近はひさしぶりだった。相変わらずボビーはかっこよくて、いい感じで年取ってるなって思いました。"Rocks"も聴けたし、最後の"Movin'

On Up"では大感動。

 ステージ終わってアンコール。今年最大のサプライズが待っていました。なんとDinosaur

Jr.のJ・マスシスがギターを持ってステージに登場。今回BeckとFatboy

Slimを見たためDinosaur Jr.は見逃していて、一番惜しい見逃しだっだけにうれしい。しかも紛れも無くJのギターの音が出ている。

 この時、ステージの上には、私にとって青春の象徴だったボビーがいて、また同じく青春の象徴であったThe

Stone Rosesのマニがいて、昔好きだったFeltというバンドでキーボード弾いてたマーティン・ダフィがいて、これまた昔好きだったDinosaur

Jr.のJ・マスシスがいる。なんかいろいろと昔好きだったものが揃っている。今までの人生というと大げさだけど、いろんな事があって生活も変わって、いろんな経験してきて、辛い事とかがかなりあって、一時期フジロックにも、どのフェスにも行けなかった時期があった。でも今はまたこうしてフジロックを体験している。そう思うと辛かった事とか、楽しかった事が頭を駆け巡ってうかつにも泣き出してしまった。あくまで一瞬ですけど。顔がひしゃげてきてしまって、手で覆い隠してすぐに元の顔に直しましたけどね。恥ずかしい話ですね。

 アンコールラストはPRIMAL SCREAMお得意のストゥージスのナンバー"No Fun"で終了。これで今年のメインアクトはすべて終わり。

 でもまだレッドマーキーが残っています。"Power

To The Pelple"が流れるなかスピード上げてレッドへ向かう。だってMyloがもう始まっているんだもん。

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 レッドからもう音は聞こえているけど、腹減っているのでワールドレストランで、オムライス&ココナッツカレーを買ってレッドに向かう。入り口前でオムライスとカレーをかきこんでから、Myloを見る。バンド形式でちょっとびっくり。

 なんともきらびやかな音でメロディアスでポップ! こんなに気持ちいい音で踊れるなんて幸せ。三日間の疲れなど無かったかのように踊れました。

 東京帰ったらCD買ってしまおうと思う。ダンス系ではU.S.E.と同列でベスト1のステージ。

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 次にPETER HOOKがDJで登場。NEW ORDERは見られなかったからそのぶん代わりになるかな、と思ったが… なりませんでした。Joy DivisionからNew

Orderまでかけるんだけど、なんか私的にはミックスがイマイチなんだよな。レッド内で一番盛り上がってるのが客よりフッキーだし。いままでいろんなフロアで聴いてきた"Blue

Monday"の中で一番良くないミックスがフッキーのかけた物だなんて…

 もちろん楽しかった人もたくさんいるでしょう。レコードかけるだけでも、かけ方で印象がガラリと変わってしまうんですよね。

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 次のDJ

TAKAYUKI SERINOのベタなプレイに安心してしまう。ヒット曲かけまくっているんですが、実はもう私の足に限界が… フェス中に疲れてくると、地面に落ちている石なんかに土踏まずの部分を当てているとかなり足の疲れがとかとれるんで、これを合間合間によくやっていた。レッドマーキーとか石の落ちていない場所でも、落ちているペットボトル(ペットボトルは必ずごみ箱に捨てようね)の飲み口の所に乗ってグリグリとやると痛気持ち良くていいのだけど、三日間の疲れでどうやっても回復しなくなる。好きな曲がかかるたびに踊りたいのだけど、どうしても足がついてこないのです。しかたないのでオアシスに出て飯を食う。

 これで私のフジロックも終了。この最後にオアシスで飯食べてる時の充実感といったら無い。終わってしまったという寂しさもあるけど、満足感の方が大きい。飯は何を食べたかもう覚えていないが、何種類もたっぷり食べた気がする。

 レッドからSERINOが"Blue

Monday"をかけているのが聞こえてくる。やっぱフッキーのよりいいよ…

 洗面所で足を洗う。長い間泥に漬かっていた足は真っ白にふやけていて、死人の足のように見える。自分の足なのに他人の足のようだ。

 

足をひきづりながらテントへ帰る。昨年もこんな感じだったな。とにかくゆっくりとでないと足が動かない。途中の売店で会社へ持っていくお土産を買う。

 テントへ向かうまでの坂道がきつい。てくてくとゆっくり登ってやっとテントに到着。靴を脱いでテントに入り、ばたっと倒れる。この後の記憶が無い。

 そう、この時テント内で倒れた直後に私は寝てしまっていた。この事で目が醒めた後私は大変な目に…

アフター編

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