『乙女ウィルス』鈴菌カリオ (再)
鈴菌カリオはIKKI新人賞・イキマンを受賞してデビュー。これが初単行本です。毎回一話完結の読み切り短編で、作品もバラエティにとんでます。
- 「内輪」
- これはあまり面白くない。最初読んだ時はこのコミックスはずれかと思った。
- 「輪になってくるくる回ったら宙に浮いてUFO」
- この作品はいい線いっているところもあるけど、奇をてらっているだけな感じもしなくはない。
- 「たからもの」
- この作品から鈴菌カリオは炸裂いたします。全二作が悪意たっぷりなギャグものだったのに対し、これは友情がテーマで最後に少しホロリとさせます。でも鈴菌らしく少々毒も入ってます。私は小学校時代に裏切ってしまった友だちのことを思い出してしまった。
- 「ゴールデンボールZ」
- これも傑作。母の教えにより純潔を守り抜く兄妹の話。主人公みのりのセリフ「しっかりするのよみのり! 自慰さえすればこんな火照りなど……!!」とか名セリフのオンパレードです。
- 「ウルトラプリティ」
- これも鈴菌的悪意満載の意識的に超カワイイを演じる男と女の話。でもオチが弱すぎ。
- 「どきどきイルカ大作戦」
- 「内輪」の続きの戦隊もの。今回のはピンクの片思いの話で良かったです。最後の方、イルカが小魚追っかけてるコマは笑えます。
- 「知恵熱」
- これがイキマン受賞作でしょうか。『乙女ウイルス』各エピソードの原型がしっかりと出来上がってますね。妄想、暴走、勘違い、天然、ズラしたオチ。でもまだ毒が薄めなんですよね。
- 「つきよ」
- デビュー作と『乙女ウイルス』の合間に描かれた作品らしいですが、静かでロマンチックでダークな幻想譚で、こんな作品も描けるのかと驚き。ラストのモノローグも文才感じます。
- 「マイホーム」
- おまけ漫画なんですがこれが笑激の傑作だった。ここ数年で読んだどのギャグ漫画より面白い。
そんなわけで、ギャグ、シリアス、青春ものを鈴菌の毒で暴走させた作品群。一度感染したらやみつきです。