『旧約聖書を知っていますか』阿刀田高 #05

「第9話 逃亡者ヨナ」
ヨナ、アルタヤ、ユディトのも三つのエピソードを紹介。やはりなんと言ってもヨナである。『ピノキオ』にクジラに飲み込まれてその中で生活する話が出てくるけど、その原型となる大魚に三日三晩飲み込まれて吐き出される男の話。
私がキリスト教に興味を持ったきっかけは中学時代に知ったアブラハムのエピソード。敬虔なアブラハムは神に自分の子供を生け贄に捧げろと言われて苦悩する。そして子供に刃を向けるのだが…
私はこのときアブラハムは結局神の言葉とはいえ子供を刺すことが出来ず、その子を思う心を神に褒められるのだとばかり思っていたら、アブラハムは本当に殺そうとして、神にその信心を讃えられるのである。
これには唖然とした。人を試した上に、自分の子供と神を天秤にかけさせる。しかも神のための殺人まで肯定している。この傲慢な神を信仰するキリスト教とはいかなるものなのかと思った。
で、ヨナである。彼は神に反抗する。反抗したから魚に飲み込まれる。だからなんかヨナを応援したくなってしまう。さらに依怙贔屓を信条とするイスラエルの神が、他民族の救済をも示唆する。そんなわけでこの話は気に入ってしまった。

旧約聖書を知っていますか (新潮文庫)