『本の読み方 スロー・リーディングの実践』平野啓一郎 #01

特に読書の仕方の本が読みたいわけで買ったのではない。平野啓一郎の小説以外の文章やインタビューが好きだからだ。小説の方は難解で最後まで読めそうにないからチャレンジしていないけどいつかは読みたい。

  • 「序 本はどう読めばいいのか?」

私はかなりの遅読なので、いつも速読に憧れている。あの本もこの本も読みたいのに! っていつも思っている。もう少し集中力さえあれば… なんて考えていた。実は平野啓一郎もそう思っていた時期があったらしく安心した。
しかし「速読コンプレックス」を捨てて本とじっくり向き合う事の方が大事。そのじっくりと本に向き合うことをスロー・リーディングと名付けて、そのコツを紹介、読書を楽しもうという本らしいです。

  • 「第1部 量から室への転換を」

いわゆる速読について書かれている本を「自己啓発本」にすぎないとし、その弊害を指摘。「速読家の知識は、単なる脂肪である」「速読は信頼性の低い読書」と言うあたりが小気味よい。
小説は速読できない。小説には様々なノイズがちりばめられていて、そのノイズを刮げ落としてストーリーを純化させてもつまらない話になるだけである。そして作者の視点にも立って読んでみようとの事。
速読は利己的で、スロー・リーディングは利他的であるという言い方が面白い。

  • 「第2部 魅力的な誤読の進め」

助詞、助動詞の使い方がうまいと文章もうまくなるとの事です。それらに注目しながら文章を読む事も重要。さらにペンなどで印を付けていく事も重要。このとき要となる助詞、助動詞に印をつける点がポイント。ペンが無い時は本の端を折れとあったが、これは私も日常的に行ってました。
余談だが以前斉藤孝の『三色ボールペンで読む日本語』を読んだ事がある。が、実践できなかった。ベストセラーとはこんな風に尤もらしい、でも薄い事が書いてあるのかと思った。ただ、要約する力を身につけるという点ではこの本にも共通していますね。
何でも疑問に思ったらすぐに辞書を引いてその言葉の正確な意味を把握しとくべきとの事。言葉が正確に使われているほど、その文章には自ずと説得力がうまれる。私は電子辞書も持っているし、有料の辞書サイトまで利用しているのに、ついつい億劫であまり辞書を引く癖を持っていなかった。先ほどから頻繁に登場している「助詞」「助動詞」も意味を正確には把握していない。ちょっとデジタル大辞泉で調べてみよう。

じょ‐し【助詞】
品詞の一。付属語のうち、活用のないもの。常に、自立語または自立語に付属語の付いたものに付属し、その語句と他の語句との関係を示したり、陳述に一定の意味を加えたりする。格助詞・副助詞・係助詞・接続助詞・終助詞・間投助詞(さらに準体助詞・並立助詞その他)などに分類される。古くから助動詞あるいは接尾語などとともに「てにをは」とよばれた。

じょ‐どうし【助動詞】
品詞の一。付属語のうち、活用のあるもの。用言や他の助動詞について叙述を助けたり、体言、その他の語について叙述の意味を加えたりする働きをする。

さっぱり意味がわかりません(泣)
書き手の意図を正確に理解する読み方と、自分なりの創造的な解釈を試みる事を同時に行うべきだという。自分なりの解釈する方法を、テクスト理論などを例にとり「豊かな誤読」とする。
「人に説明することを前提に読む」これは要約する力をつける、という事ですね。
ある本には、それに影響を与えた本がいくつもあり、また同じ作者による違う本があり、本は様々な連鎖を生む。その繋がりを感じながら読む事で奥深く理解できるようになる。また自分が「似ている」とか、「反対だな」と思った別の作品と比較しながら読み、その類似点や差について考える事も重要だという。
ちょっとでも理解できなかったら何度でも、戻って読み返せとあるが、これがけっこう難しくて、やりすぎると最後まで読めなくなってしまう。
長くなったが、助詞、助動詞、調べる、誤読、要約、比較、再読が重要だという事。ちょっとてんこ盛りすぎて読書ってこんなに大変なものだったのか! と思ってしまった。

本文中に「私は、良いと言われることは何でもやってみるほうだから」とあった。この誠実さが平野啓一郎の良いところなのだろうと思う。

本の読み方 スロー・リーディングの実践 (PHP新書)