『悪夢探偵』塚本晋也監督 渋谷シネセゾン

悪夢探偵 スタンダード・エディション [DVD]
ストーリーはキャリア組だった女刑事(hitomi)が夢の中に潜入する事のできる悪夢探偵松田龍平)と謎の自殺事件に挑む。といった感じ。
以前見た『ヴィタール』がかなり面白かったので今回も期待して観ました。
夢の中に入り込む探偵といったストーリーは、『パプリカ』と同じですね。『パプリカ』はこのブログを休んでいるときに観てきました。筒井康隆の原作は面白かったのですが、映画化に当ってかなりのエピソードが削られているための面白さのポイントがかなりズレているような気がして、今敏監督作品の中ではちょっと落ちる出来でした。
悪夢探偵』ですが、夢と現実の境を曖昧にするためなのか、悪夢があまり悪夢に感じられない。悪夢の焦燥感ってこんな感覚だったっけ? と、ちょっと物足りない。スプラッター的な恐さは悪夢的ではないし、首を勢いよく降りながら、口が窄まっていくシーンは悪夢的ではあるが他の映画でも見た事のあるようなイメージだ。スプラッターや音による脅かし以外の悪夢的イメージがもっと見たかったな。
『ヴィタール』ではのKIKIが凄まじい名演を見せたので、hitomiはどうかな? と思ったのですけど、いやー凄かった。久々に見たよここまで演技のできない人。最初悪夢探偵役の松田龍平が「いやだいやだ」とマンガチックなセリフをはいて、舞台的な演技だなと思っていたけど、hitomiの大根さに合わせるためにわざと不自然な演技をしていたのではないか? と思ってしまうほどだ。

都会の中に生きている人々のさまざまな思い、その中には無数の「死にたい」という気持ちが渦巻いている。しかし実際に死ぬのは恐い。それは「死んだらどうなるのか?」という答えに確証が持てないからだ。自殺者はその死後が今よりも楽であるという幻想を持つ事によって死を受け入れようとするのだと思う。しかし実際にそんな思いを持つ事はできないから死ぬ事はできない。実際の多くの人が一度は死にたいという思いを抱いた事が少なからずあるのではないか? 犯人の”0”(塚本晋也)はその思いを利用して人を死に至らしめる存在。
登場人物たちは過去にトラウマを抱えていてそれにより死を意識し続けている。最後の戦いでは彼らのトラウマとなった記憶がほじくり返され、”0”に追いつめられていく。が、最後にhitomiは悪夢の中で幼いころの両親に愛されていた自分を見つけ出す。生の思いが、死への幻想を上回った事で、hitomiと龍平は”0”に勝つ事ができたのではないか?

映画を観ている最中に死ぬというのはどういう事なのかと考えさせられてしまった。それと、自分にも「死にたい」と切実に願った事があるのかと? もしそんな憶えが無かったとしても、”0”のように記憶が封印されているだけなのかもよ…

『ヴィタール』や『bulletballet』でも塚本晋也は「死とはどういう事なのか?」について考える映画を撮っている。たしかに「死」ついて真剣に考える事は「生きるってどういうこと?」を考える事に繋がる。

ラストシーンのhitomiと龍平の会話や、妙にキャラ立っている龍平の悪夢探偵の感じから、続編が作られる感じがしました。実際オフィシャルサイトを見たら監督はそのつもりらしいです。

途中hitomiにオカルト方面から操作を進めろと命令されるシーンに出てくる老刑事が江戸川乱歩にそっくりでウケました。

以前書いた『ヴィタール』の記事もこちらにアップしておきましたので読んでみてください。

official site
悪夢探偵 プレミアム・エディション [DVD]

悪夢探偵 プレミアム・エディション [DVD]

悪夢探偵 スタンダード・エディション [DVD]

悪夢探偵 スタンダード・エディション [DVD]

悪夢探偵 (角川文庫)悪夢探偵 オリジナル・サウンドトラック
パプリカ [DVD]