『イカとクジラ』ノア・バームバック監督 新宿武蔵野館

"The Squid and The Whale"2005年/USA/81分
イカとクジラ [DVD]
ウェス・アンダーソンが製作。『ライフ・アクアティック』でも共同脚本を書いていたノア・バームバック監督の作品。
まず、ちょっと粒子が粗めで黄みがかった映像がいい。
両親が作家という環境で育った兄弟の話し。作家家族のせいか子供も親も皆少しクレイジーだ。
兄貴のウォルトは文学作家としての父親を尊敬していて、大衆作家である母親を少し軽蔑していた。ラスト近く、父親に幻滅したウォルトは、幼いころのまだ母親と仲が良かったころの思いを胸に母親を訪ねるけど、父も母もまだ大人になりきれていない。ウォルトは母親との思い出の場所である、博物館にイカとクジラを見に行く。幼かったころは、そのイカとクジラの戦っている模型が恐くてまともに見る事ができなかった。でも今ならじっくりと見る事ができる。今見ると恐かったイカとクジラもどことなく滑稽だ。愛嬌さえある。
ウォルトはこのときイカとクジラの滑稽さと両親が重なって見えたのではないかと思う。ウォルトはこれで少し大人になったのだ。
で、更にクレイジーな弟はどうなのか? 彼もラスト近くに「ブラザー」といって飼い猫を兄貴に託す、そんな寛容なところをみせた。彼もいずれ兄のように迷いながらも少しずつ大人になって行くのだと思わせるシーンだ。
全編そこはかとない可笑しさがぎっちり詰まっていてとても面白いいい映画だった。
久しぶりにウィリアム・ボールドウィンを観た。あまりのモサイ感じの役だったので驚いた。
ライフ・アクアティック [DVD]