『危険な虫』Miruz

危険な虫

Miruz
ガタンゴトン、ガタンゴトン
電車に揺られながら惚けていた。
「あー退屈だ」
何か暇つぶしでもないかな。昨晩はたっぷり寝たせいか、まったく眠くないし。
ふと上を見上げると、網棚に誰かが置いていったらしい新聞があった。
「しめしめ、やったぞ、これで暇がつぶせる
早速新聞を取って読み始めた。
「相変わらず、景気の悪い記事ばかりだな
あっちこっちの国では戦争ばかり起きているし、この日本でも残虐的な犯罪ばかり起きている。どうしたことか。
「あれっ、また原子力関係の事故か。まったくずさんな管理ばかりしやがって。
「ふむふむ『クローン技術、さらに進む』か
やっぱあれだね、「クローン人間は、造ってはダメ」っていくら決めても、どこかで絶対に造っちゃうやつらが出てくるよね。いろいろ理由をつけてさ。学者たちの好奇心を押さえることは不可能だろうからね」
などと考えながら読んでいると、片隅に奇妙な記事を見つけた。

『危険! 有毒な虫が研究所を、脱走』
*月*日、午前十時ころ、**県の**市にある、ヨンズバイオ研究所において研究中だった新種の虫が、所員の管理ミスによって、脱走してしまった。
その虫とは、同研究所で最近、偶然開発されたものだった。この虫は極めて特殊な性質を持っていて、文字の濁点『゛』ばかりを食料とし、体から有毒なガスを発散する。そのガスは無臭で、人間を数十秒で死に至らしめることの出来る猛毒で極めて危険。また繁殖力も強い。研究所では現在、総力を上げて虫を捕獲しようとしている。

「なんだ、この記事は何かの冗談か。今の世の中変なことばかり起こるね
一通り新聞も読み終わったし、またすることないな。
「あーまた暇」
少しの間、惚けていた。
「んっ なんか体中痺れてきたよ。力も抜けていく 目も見えなくなってきた あー苦しいっ」
微かに電車の音は聞こえる。
カタンコトン カタンコトン

Strange bug
1999/10/26初
2001/02/10改