『旧約聖書を知っていますか』阿刀田高 #03

「第5話 サムソンの謎」
著者の阿刀田は聖書のサムソンのエピソードを、イスラエルに同化された少数民族の英雄譚が混入したものと考察している。確かにイスラエルの神の存在感が薄いエピソードだし、俗っぽくもあるので、なるほどなと思った。だが、そもそも聖書自体様々な民族の伝説、民話が取り込まれているものなのでは?


「第6話 ダビデの熱い血」
カナンに住むようになったイスラエルの十二士族も時間が経つにつれて唯一神への信仰だけでは社会を安定させるのが困難になってくる。指導者であったサムエルも年とともに指導力が衰える。そんなとき民の間から新しい指導者、王が求められてくる。サムエルはそれを聞いて「王を立てても、民はその王の奴隷となるだけだぞ」と諌めるが民はそれを聞き入れない。これには納得。結局人って奴隷となること、支配されることを欲している場合があるのだと思う。理由はその方が楽に生きれるからです。
その後サウル王が誕生するがうまく行かず、その後に登場するのがミケランジェロの彫像で有名なダビデ王です。ダビデ王も始めから英雄だったわけでなく、いろいろと過ちを犯すのですが、その過ちの代償として神から受ける試練が、自分の子供が殺されるといったものなのです。いつも思うんですが、ダビデはそれを試練として受け入れ成長するわけですが、殺された子供たちの人生って何? って感じです。唯一神の身勝手えこひいきは今日に始まったわけではないのですが…
もう一つこの章にはルツ記のことが書いてあります。これは異教徒がその信仰や故郷を捨ててまでイスラエルの神に献身的に身を捧げることの尊さを説いているのですが、この話もキリスト教らしいエピソードですよね。

旧約聖書を知っていますか (新潮文庫)