『本の読み方 スロー・リーディングの実践』平野啓一郎 #03

  • 「第3部 古今のテクストを読む」(続き)

翻訳物の登場です。前回までの語句を丁寧に解釈していくやり方が翻訳ものだと、訳と原文の間に生まれる微妙な誤差によって解釈が違ってきそうな気がしたけど、翻訳に関しての注意は特に書いてなかったので、翻訳者含めての作品と考えて、よいのでしょう。
ちなみに今回のカフカのテクストは池内紀訳。以前フリーペーパーに山本英夫の『ホムンクルス』について書いた時に、ゲーテの『ファウスト』を引用しようと思って、いくつか立ち読みで比べてみたら、彼の訳が一番しっくりきた。
カフカは冒頭からいきなり読者を煙に巻く様な違和感をぶつけてくる。この違和感をないがしろにせず、その驚きを素直に楽しもうという事です。
論理的なアプローチの難しい作品に対しては形容詞、形容動詞、副詞から喚起されるイメージを手がかりに手探りを始めるとよいらしい。それは、なぜ修飾語ではダメなのか? そしてその対義語を考えてみる。そうする事によって形容詞、形容動詞、副詞であった事の意味が分かってくる。ここら辺は具体的な説明が無いと何の事かわからないが、長くなるので説明は端折る。だが目から鱗です。
状況が一変した時(場面展開があった時)はその意味を考えてみる。(難しい。)
そして誤読を恐れず、大胆に自分なりに解釈すべき。そして自分の解釈を過信しない。それは時間が経つにつれて変わっていくものだったりするからだ。その解釈の変化が生きている自分の変化でもある。

小説というのは、マジックミラーのようなものである。しっかりと目を凝らせば、向こう側に作者が見えるかもしれない。しかし同時に、そこに映し出された自分自身を見てしまうかもしれない

なるほどー!! 名言。

カフカ短篇集 (岩波文庫)
例のごとく、また調べてみましょう。
デジタル大辞泉」より

けいよう‐し【形容詞】

1 国語の品詞の一。活用のある自立語で、文中において単独で述語になることができ、言い切りの形が口語では「い」、文語では「し」で終わるものをいう。「高い・高し」「うれしい・うれし」の類。事物の性質や状態などを表す語で、動詞・形容動詞とともに用言に属する。口語の形容詞は活用のしかたが「(かろ)・く(かっ)・い・い・けれ・〇」の一種であるが、文語の形容詞にはク活用・シク活用がある。

2 広く、物事の性質や状態を表す言葉。品詞論の「形容詞」に限らない。「保守的というのが彼らに冠せられる―だ」

けいよう‐どうし【形容動詞】

国語の品詞の一。活用のある自立語で、文中において単独で述語になることができ、言い切りの形が、口語では「だ」、文語では「なり」「たり」で終わるもの。「静かだ」「静かなり」「堂々たり」の類。。形容詞と同じく事物の性質や状態などを表す語であるが、活用のしかたが形容詞と異なる。口語の形容動詞は活用のしかたが基本的には一つで、「だろ・だっ(で・に)・だ・な・なら・〇」と活用する(若干の変種がある)が、文語の形容動詞にはナリ活用・タリ活用の2種類がある。なお、活用語尾が「から・かり・かり・かる・かれ・かれ」と語形変化するものをカリ活用として、形容動詞の一活用とみる説もあるが、現在の学校文法では形容詞の補助活用として扱う。

ふく‐し【副詞】

品詞の一。自立語で活用がなく、主語にならない語のうちで、主として、それだけで下に来る用言を修飾するもの。事物の状態を表す状態副詞(「はるばる」「しばらく」「ゆっくり」など)、性質・状態の程度を表す程度副詞(「いささか」「いと」「たいそう」など)、叙述のしかたを修飾し、受ける語に一定の言い方を要求する陳述副詞(「あたかも」「決して」「もし」など)の3種に分類される。なお、程度副詞は、「もっと東」「すこしゆっくり」のように体言や他の副詞を修飾することもある。

しゅうしょく‐ご〔シウシヨク‐〕【修飾語】

文の成分の一。ある語句の概念内容、または陳述の態度について意味を限定するもの(語・連語または文節についていう)。体言を修飾するものを連体修飾語(形容詞的修飾語)、用言を修飾するものを連用修飾語(副詞的修飾語)という。

たいぎ‐ご【対義語】

1 同一言語の中で、意味が正反対の関係にある語。一方を否定すれば必ず他方になる関係の「男1女」「生1死」などの場合、程度の差を表す「大きいー小さい」「遠いー近い」「よいー悪い」などの場合、一つの事柄を見方や立場をかえて表現する「売るー買う」「教えるー習う」などの場合がある。アントニム。反意語。反義語。反対語。

2 広く1に加えて対照的な関係にある語、例えば「天ー地」「北極ー南極」などをも含めていう。

ここら辺の言葉はしっかりと認識しておきたいのだけど、イマイチ辞書では意味が分かりません。何かいい本無いかな?

今回も「違和感」を感じる部分に注目。スロー・リーディングにとってもっとも重要なのは作中で違和感を感じた部分に着目するということがはっきりしました。
金閣寺』もクライマックス直前に禅海和尚という今まで登場していなかった未知の人物が突然現れる。そして老師、父、和尚の三人が対比させられている事に気がつくと、三人が主人公にとって三種類の父性を象徴している事がわかる。そしてその父性を象徴する人物をなぜここで登場させなければならなかったのかを考えてみる。それは老師と父の影響により主人公を拘束していた呪縛を解き放つ役割を和尚は担っていたため。
しかしここら辺はやはり難しいですね。
三島は、分裂していた主人公の意思が和尚との会話によって、鮮明な意思へと変わっていく様を、心の中の動きをそのまま綴るという方法ではなく、和尚と対話させる事によって描いている。
その他にも会話の中にいくつか小技が使われている。語尾を老人風の言葉にやや強調して書く事は、言葉に威厳をもたせ、若い主人公の言葉と対比させる役割をもっている。
会話の中に様々な行動の描写、風景描写、心理描写を挿入して「間」を作っている。それは作者にとって重要な場面をサラッと簡単に読みとばされないために挿入しているものなので、そういった「間」の後には重要な発言が控えている。

金閣寺 (新潮文庫)


今回のポイントは、「違和感の発見、対比されているものの発見。そしてなぜそれが挿入されているのか考える事」だと思うので、少なくともこれだけは頭の片隅において、これからも本を読んでみよう。(多分無理かな…)
本の読み方 スロー・リーディングの実践 (PHP新書)