『ウェブ進化論』梅田望夫 #03

  • 第二章 グーグル-知の世界を再編成する(続き)

5.グーグルの組織マネジメント (要約)

    • ・情報共有こそがスピードとパワーの源泉という思想
      従来の組織内では情報は隠蔽され一部の者から一部の者へ伝わり解決される事柄だった。だから組織内で貴重な情報を握ることが生き残るための条件だった。しかし小さな組織では全ての情報を各自が共有するようになると、もの凄いスピードで物事は解決していく。誰かが提示した問題を他の誰かがどんどん解決していくからだ。著者はそのことを株式会社はてなの役員になったことで肌で感じることが出来た。
      Googleは5000人規模になった今でも創業以来の情報共有のシステムを使い続けている。
    • ・「採用とテクノロジー
      Googleの目指すものは「抜群に優秀な連中を集め、創造的で自由な環境を用意する。ただし情報を徹底的に全員で共有した上で、小さな組織ユニットをたくさん作り、個々がスピード最重視で動き、結果として組織内で激しい競争を引き起こす」スタイル。
      創造的だが競争的で自分を管理できる優種な人材を集め、それをテクノロジーで支えることがカギとなる。
    • ・「ベスト・アンド・ブライテスト」主義
      他にも「抜群に優秀な人材だけを集める」ことを徹底的にやったのはビル・ゲイツだ。彼が求めた「超秀才」とは、新しい知識を素早くリアルタイムで飲み込む能力、鋭い質問をする能力、異なる分野の知識を関連づけて理解する能力、強い熱意と極度の集中力を持つ、コードを一目見ただけで理解できたり、自分の書いたコードを写真のように頭に思い浮かべられるほどプログラミングに長けている、などの能力を持った人物である。同じような人材を求めているのがGoogleでだ。
      ビル・ゲイツと違うのは博士号を持つ社員をあまねく配置し、全ての社員に研究者のように行動するように求めているところ。博士号を得られるほどのパワーを持つ人材を重視している。
    • ・五〇〇〇人が全て情報を共有するイメージ
      5000人という大きな規模での情報共有は、情報自身の淘汰を起こすに任せる事によってそれを可能にする。有用な情報は誰かがそれに反応し拡大していくが、必要の無い情報はそれに触れるものも無く、自然に過去のものとなって消えていくからだ。
      この仕組みを理解できるかどうかは、ネット空間での情報リテラシーを持つか否かに大きく依存する。
    • ・情報共有によって研ぎ澄まされるエリートたちの激しい競争
      Googleには「20%-80%」というルールがある。就業時間の80%は既存のプロジェクトに参画し、20%は個人での新規テーマに使う。それもアイディアの段階から情報は公開され、それが認められるために動くものを開発して証明する。
      アイディアを実現させるためには様々な問題が生まれる。それを解決し、動く形にして初めて評価される。アイディアを発案するだけではダメなのだ。
      個人の開発したものが周りに認められれば20%プロジェクトとして認定され、それが進められる。更にそれが認められ事業として動き出せば80%プロジェクトとなってGoogleのサービスに組み込まれる。
      このアイディアの淘汰の仕組みが社員の競争力を刺激している。

企業内で情報を共有する事で効率を図るという方法がこんなにも魅力的で有効だとは! 私の今の職場で一番必要なのはこの情報共有なのだなと思った。以前うちの社長が「社員同士が仲がいいと、おしゃべりばかりしていて困るが、仲がいい方が結果的には良い方向へ行く」みたいなことを言っていたが、これは情報が共有されている状態だからなのだろう。
5000人が情報を共有している状態に始めはピンとこなかったが、この情報淘汰の原理で納得できた。

このGoogle社内の競争の中で生き残れるのは相当優秀な人材なのだろう。が、いずれ疲弊してしまわないか心配だ。
6.ヤフーとグーグルはどう違うのか (要約)

    • ・グーグルと楽天ライブドアとどう違うか
      消費者を主対象とするネット産業をサービス産業と考えているのが楽天ライブドアを始めとする従来の企業。Googleだけがそれをテクノロジー産業と考えた。
      GoogleはIT産業にパラダイムシフトを起こす10年に一度現れる特別な企業だ。
    • ・ヤフーはメディア、グーグルはテクノロジ−
      Yahoo!はメディア企業として自社をとらえ、サービスの提供にテクノロジーを利用するが、必要な場所には人間を介在させる。Googleは全てのサービスに人間を介在させず、コンピュータで自動的に行う事を目指している。
      ニュース記事の有用性を自動判別させて載せるグーグル・ニュースの編集方針と、人間の視点で記事の有用性を判断するヤフー・ニュース編集方針の違いに、両者の特徴が表れている。
      Yahoo!Googleの本質的な違いは、映像コンテンツをめぐって戦う事になって、はっきり見えてくる」とジョン・バッテルは言う。

Googleの、全て自動でコンピュータにまかせるというのは、「民主主義」の公平性を徹底的に行うという事なのだろうと思う。それは人間の持つ偏見、思い込み、勘違い、傲慢などを排除する事で可能になる。階層や差別の無い世界をGoogleは本気で目指しているのかもしれない。
Yahoo!Googleの戦いの本質は、「人間の善」部分に期待するYahoo!と、「人間の負」の部分を排除するべき、と考えるGoogleの争いにほかならないと思う。
Etech 2003:Craig Silverstein
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