『高校生のための評論文キーワード100』中山元 #07

  • 異端
    • 正統に反しているという異端があるためには、正統がなければならない。また正統という概念が生まれるためには異端が存在しなければならない。正統と異端は戦いのうちで作られていく。
    • キリスト教などでは、激しい論争で勝利を収めた理論が確立されていくプロセスの結果、正統と異端が確立されていく。正統になる条件は理論的な論拠だけでなく、政治的な力も必要とされていた。正統が普遍的な物に見えたとしても、視点が変われば、普遍性そのものも変わってしまう。
    • 主流から逸脱する流れも異端と呼ばれる。芸術の世界ではしばし異端が、凝り固まってしまった正統を打ち砕き、新しい想像を生む力として評価される。
    • ある制度が確立され、その中心的なものを正統として表現すると、これに反する者は異端視として排斥される。しかし異端にはこの制度を変えていく要素が常に含まれる。既存の制度が続くと、制度のうちに慣性のような力が働き、変化に抵抗するようになる。正統の流れを相対化できるのは異端の流れである。
    • 異端は、「あえて異を唱えることに、存在理由を見いだす」傾向があり、異端であることに満足してしまう危険性がある。正統の持つ力を認識することが出来ず、異端であることに甘んじてしまう。

「制度のうちに慣性のような力が働き、変化に抵抗するようになる」という表現が面白いですね。
「あえて異を唱えることに、存在理由を見いだす」人って多いですよね。特にマスコミの世界に。

高校生のための評論文キーワード100 (ちくま新書(542))