『ウェブ進化論』梅田望夫 #06(要約)

ロングテールWeb2.0 (続き)

3.Web2.0ウェブサービスAPI公開

  • Web2.0とは何か
    • Web2.0の定義については現在でも議論が続いているが、「ネット上の不特定多数の人々(や企業)を、受動的なサービス享受者ではなく能動的な表現者と認めて積極的に巻き込んでいくための技術やサービス開発姿勢」というのが本質である。
    • 自社の統制がほとんど及ばない社外へ無制限のリソースを提供することで、広がったデータが更に新しい価値を生み出す連鎖が起こる。
      eベイの創業者ピエール・オミディヤーはWeb2.0について「皆が共有、恊働できる道具を人々の手に行き渡せる。それを”人々は善だ”という信念で始める*1」といっている。これは反体制的、楽観主義的なシリコンバレー精神によるところが大きい。
  • ネットの「あちら側」からAPIを公開することの意味
    • SにおけるAPI*2とネット上のサービスにおけるAPIの違い*3は、OSのAPIが対象となるコンピュータの上で動くサービスの提供だけに限られたクローズドなものだったのに対し、ネット上のAPIは、地球上のネットに繋がった全てを巨大なシステムと見なして、それらの提供するサービスや情報をアクセス可能にする大きなもの。
  • グーグル・マップスAPI公開
    • Googleの「グーグル・マップス*4」やYahoo!の「ヤフー・マップス*5」のAPI公開は、不特定多数の開発者に地図を使ったサービスを自由に開発させる。それによりさまざまな用途で、より広く使われるようになる。
    • はてなマップ*6」は「グーグル・マップス」のAPI公開から1週間で公開できた。
  • がっくりと肩を落としたコンピュータ業界の長老
    • いま「こちら側」で作られている大企業のシステムは長い期間と巨大なコストで閉鎖的に作られている。しかしネットの「あちら側」では、いろいろなリソースが融合して短い時間、低コストでシステムが作られていく。
    • 「こちら側」と「あちら側」のシステム製造コストの差が大きく出始めている。大企業が「あちら側」のデータやサービスを利用するためには自らも開放的にならなければならない。今はそれが難しいかもしれないが、いずれは開放的にならざるおえない時が来る。
  • ヤフー・ジャパン、楽天Web2.0に移行できるか
    • これからのGoogleらネット列強の役割は、ロングテール追求の連鎖をウェブ全体に起こすことだが、2005年末段階において日本のネット列強ヤフー・ジャパン、楽天Web1.0的閉鎖空間での事業にとどまっている。
    • ネット列強のサービス提供者がWeb1.0的だと、その周辺にロングテール追求の事業機会は生まれない。
    • 楽天のようなアフィリエイトを普通のユーザが利用する場合は限られた商品しか、紹介できないのでロングテールを追求することが困難。Amazonのように全商品を扱うことが可能なプログラミングの出来るサービスを提供できなければならない。

あるサービスのシステム開発が超低コスト化し、開発スピードも速まることで生まれる、今までに無いアイディア、あるいは無理だということで捨てられていたアイディアの登場にワクワクしてしまいますよね。
Web2.0的な企業と、Web1.0的な企業、革新と保守の争いはこれからどうなっていくのでしょう? 保守が自らの利益を守り続けることができるのか? 我々庶民である一消費者はWeb2.0の革新が勝つことに期待したいです。日本のネット企業がいまだWeb1.0的ってのが気になりますね。
連鎖による発展というのは予想をはるかに上回る効果がありそうで、重要な要素ですよね。

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)