『ウェブ進化論』梅田望夫 #09

ブログと総表現社会(続き)

4.組織と個とブログ

  • 信用創造装置・舞台装置としてのブログ
    • ある人物と会うときには、事前に検索エンジンなどを使って相手のことを調べておくことが自然になってきた。その意味でブログは信用創造装置として機能している。また、見ず知らずの相手とも信頼関係を生み出せる舞台装置としての側面も持つ。
      今は「共同体意識に縛られた日本の旧来型組織」の外で質の高い仕事を得られることが多くなった。その意味でも個の信用創造装置・舞台装置としてのブログの意味は大きくなっていく。
    • ブログは個にとって大いなる知的成長の場になる。
      「ブログを書くという行為は、恐ろしい勢いで本人を成長させる」*1
      「自分がお金に変換できない情報やアイディアは、溜め込むよりも無料放出することで大きな利益を得られる」金、人脈、後ろ盾がなくとも、情報の開示によって自己へのコンセンサス、交渉時のアドバンテージが得られる。*2
    • ブログで知的成長の過程を公開することで、その人を取り巻く個と個の信頼関係が築かれていく。
  • 知的生産の道具としてのブログ
    • 自分にとってブログは知的生産の道具として極めて有効だ。理由は、
      1. 時系列にカジュアルに記載でき、事実上要領に限界がない。
      2. カテゴリー分類とキーワード検索ができる。
      3. PCを持ち歩かなくともインターネットさえあれば情報にたどりつける。
      4. 他者とその内容をシェアすることが容易。
      5. 他者との間で知的生産の創造的発展が期待できる。
    • 道具としての短所を補う意味での「歩み寄り」として、
      1. 対象となる情報がネット上にある場合、リンクを張るだけでなく出典も転記し、重要な部分はコピー&ペーストしておく。
      2. ネット上の情報でない場合は、出典を転記し引用する。その場合引用の理由を書き、範囲も常識内にとどめておく。
  • 夢を実現させてくれたわが「バーチャル研究室」
    • 日々の勉強のプロセスを公開したことにより、そこに多くの読者が集まり、新しいアイディアを提示すれば、それに対して真剣なフィードバックが行われ、自分の視点を押し広げてくれる「正のループ」が生まれるようになった。*3*4
    • ブログに続くイノベーションとして、ソーシャル・ブックマークというサービスが普及し始めた。これはネット上の記事などをブックマークして、それに簡単なコメントを添えるシンプルなものだが、それをネットの「あちら側」においたことに意味がある。
    • これにより、書き手の立場からは、書いたものがどのような受け取られ方をしたかをリアルタイムで確認できるようになった。
      読み手の立場からは、勉強のプロセスが公開されている感覚で、そこから情報を得ることができる。

私自身は、ブログを匿名で書いているので、ここにあるような「信用創造装置・舞台装置としてのブログ」にはなり得ていないけど、「知的生産の道具としてのブログ」というのは本当に効果があると思います。今こうやって『ウェブ進化論』を要約し続けているのも、平野啓一郎氏の『本の読み方 スロー・リーディングの実践』の自分なりの実践であり、これをテキストエディタ上で書いたところで、絶対に長続きしないのだけど、多少なりとも読み手を意識してブログに公開するだけでモチベーションも上がり、続けることが可能となっている。私自身が三日坊主にならずに続けていられる。これだけでもブログの力はすごいと実感できる。
が、まだまだマメにやることを手間と感じてしまうせいで、ソーシャル・ブックマークを活用できていない。もっとうまく使いこなせば、ネット上の情報を自分なりに、整理、体系付けることが可能なのだろう。

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)