『ヒストリー・オブ・バイオレンス』デイヴィッド・クローネンバーグ監督 DVD

"A History Of Violence"2005年/USA/96分
クローネンバーグの映画なんて久しぶり。『戦慄の絆』以来かもしれない。『スキャナーズ』や『デッドゾーン』が好きな映画です。
この映画は面白かった。どんな話しかまったく知らないで観たので、先が読めず楽しめた。なんか自分まで暴力の力に怯え、戦慄し、たまに爽快さまで感じて、いろいろと考えさせられた。
以下はかなりネタバレになるので、映画を見た人だけ、枠内のテキストを選択して読んでください。

この映画で特筆すべきは、我らが馳夫(ストライダー)こと、ヴィゴ・モーテンセンの演技力。優しい父親の顔から、狂気で凄まじい男の顔まで、演じきっています。
最初に出てくる二人組の男。罪悪感ゼロであっさりと暴力を行い、我が物顔でのし歩くも、その二人があっさりと殺されてしまう。唖然としていると、エド・ハリス演じる顔に大きな傷を負った男が現れる。なにせエド・ハリスが演じているので、恐い&最重要キャラと思ってしまったが、彼もあっさり殺してしまう。次にさらなる大物としてウィリアム・ハート演じる兄貴が登場。また恐いよーと思っていると、たいした躊躇も迷いもなく殺ってしまう。このあっさり感が、罪悪感の無さをはっきりさせていて恐いところである。が、それと同時に「悪い奴らをやってけてしまう」という爽快感も含んでしまうところに戸惑いをおぼえる。
結局映画は暴力によって生きてきた過去を持つ者を許し受け入れる事ができるのか? って問題定義に入りますが、幼い娘は、あっさり父を受け入れる。中学生くらいの息子はかろうじて父を受け入れる。そして奥さんは夫を受け入れられるか? ってところで映画は唐突に終わる。これも判断は観客それぞれにゆだねる。ってパターンでしょうか。
私の意見は「罪はそう簡単につぐなえる物ではない」という思いがあるので、そう簡単には受け入れられないが、彼が心を入れ替えて生きてきた人生を知っているのならば、いつか許す事も必要だと思う。

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