『幻滅』Miruz

幻滅

Miruz
点滅する切れかかった蛍光灯の下で僕は待ち続ける。
望むものなどこないかもしれないし、この点滅によって僕の気が狂ってしまうほうが先かもしれない。いや、流れ出るこの赤い僕の思いが切れるのが先か。でも、この蛍光灯がなおるまでには、決着がつくはずだ。僕と彼女とアイツとの……
僕はこのマンションのエントランスホールで、彼女とアイツを待ち伏せて。ポケットにしのばせたナイフは単なるお守りのつもりだった。あの時は失敗だったけど今度こそは……


「ねえ奥様。ここのホールの蛍光灯いつまでたっても点滅したままでいつになったら取り替えてくれるのかしら」
「なんかね、管理人さんの話によると、換えても換えてもすぐに切れてしまうらしいのよ。業者に頼んで調べてもらったらしいんだけど、何もおかしいところは無いんだって」
「それで、近頃ほったらかしになってるの」
「早くどうにかしてほしいわよね。ただでさえあの事件以来変な噂が絶えないんだから」
「あそこの床の染み、いつまでたっても消えないのもおかしすぎるわよ、ちょうどあそこに血痕があったんでしょ」
Disillusion
2001/09/09