『ウェブ進化論』梅田望夫 #01

平野啓一郎が「はてな」でブログを始めました。http://d.hatena.ne.jp/keiichirohirano/
読んでいたら梅田望夫との対談を新潮新書から出すとのことです。
最近ウェブ関連の本が流行っているわりには読んでいないことに気づき、その対談を読むための準備も含めて、遅ればせながら読み始めることにしました。

  • 序章 ウェブ社会-本当の大変化はこれから始まる。
    • [要約] 
    • 「次の10年」はIT技術の進歩により、ITに関する必要充分な機能のすべてを、だれもがほとんどコストを意識することなく手に入れられる時代がくる。これを「チープ革命」とよぶ。
    • チープ革命」によって、在野の表現者たちがどんどん表に出てくる。もともと、そういったものは大半がクズであるわけだけどGoogleを始めとする技術が、その無数の石から玉をよりわけることを担っている。これにより「プロとは何か?」「プロを認定する権威とは誰か?」といった概念が革新されていく。
    • インターネットの真の意味は不特定多数無限大の人々と繋がりを持つためのコストがほぼゼロになるということ。”放っておけば消えてしまうはずの、わずかなお金、時間の断片を無限大に近い対象から、ゼロに近いコストで収集できたら”これがインターネットとインターネットビジネスの可能性の本質。
    • 日本ではインターネットというと、善悪で言えば「悪」清濁で言えば「濁」というような負の面が強調されがちだが、「善」「清」の可能性を直視するべきだ。
    • チープ革命」は目に見える変化ではないために、能動的にその変化に関わろうとしないとその意味がはっきりわかりにくい。「ネット世界」に関わるものと「リアル世界」にいるものとの間には大きな溝ができつつある。「チープ革命」はじわじわと目に見えないところで起こっているので、気がついたら変わっていた。といずれ振り返ることになる。そのときこの二つの価値観を持つもの同士が融合した世界ができているか、別の世界が並立していくことになるか?

私は「無数の石から玉をよりわける技術」というのに凄く興味がありますね。その技術を持つものがこれからの権威となっていくわけですから大きな力を持ってしまいます。その技術を一番持つGoogleの社員の「世界政府ってものが仮にあるとして、そこで開発しなければならないシステムは全部Googleで作ろう。それがGoogle開発陣のミッションなんだよね」という発言が面白い。っていうか怖い…

  • 第一章 「革命」であることの真の意味
    • [要約] 
    • 世界中の不特定多数の開発者が、自由にソフトウェアの開発に参加できる「オープンソース」と「インターネット」「チープ革命」が三大潮流となる。「オープンソース」の本質は”優秀な才能が自発的に結びついた状態では集権的リーダシップがなくても、解決すべき課題の情報が共有されていれば解決できる”とこにある。
    • ”「次の10年」を変える「力の芽」を考える時に私が一つの拠り所にしているのは、その「力の芽」が「持てるもの」によって忌避される類いのものである一方、「持たざるもの」にとってはもの凄い武器であるときにその「力の芽」は着実に育つ、という判断基準である。”
    • もともと「過激な少数意見」であった「オープンソース」もマイクロソフトの巨大な力への対抗手段として認められてきた。コンピュータをめぐる世界の常識も時代とともに常に変化してきた。
    • 「三大潮流」が相乗効果を起こしたとき、ネット世界では「三大法則」という新しいルールにそって発展を始める。
      • 第一法則:神の視点からの世界理解
        • ネット上では、膨大な量のミクロな「動き」を「全体」として俯瞰することが可能。
      • 第二法則:ネット上に作った人間の分身がカネを稼いでくれる新しい経済圏
      • 第三法則:(≒無限大)×(≒ゼロ)=Something'あるいは、消えて失われていったはずの価値の集積
    • ネット世界の「これまでに見たことのある何ものにも似ていない」という性質は、ニュートン力学を学んできたものがそのアナロジーを使って量子力学を理解できないところに似ている。
    • 新しく生まれる技術に対する期待と現実の間にギャップが生まれそれがバブルを生む。その技術の本当の価値を見いだすまでには10年の試行錯誤が必要だ。今までもその歴史を繰り返したきた。これからの新しい潮流”ITとネットワークの価格性能比が臨界点を迎えたことで新しいことが起こる時代”を象徴するのがGoogleである。
    • サンタフェ研究所のブライアン・アーサーが今の情報革命を、英国で起きた産業革命に始まる五大革命ののうちのひとつだとした。鉄道革命を例にとり、情報革命も「混乱時期」「メディアが書き立てる時期」「バブルが崩壊する時期」を終えて、「大規模な構築ステージ」にはいった。
    • 「大規模な構築ステージ」とは「物理的なITインフラ」ではなくI(情報)インフラの構築だ。Iインフラとはインターネット上の情報を管理する設備。Iインフラによって「情報そのものに関する革命的変化」を起こしているのがGoogle



”「次の10年」を変える「力の芽」を考える時に私が一つの拠り所にしているのは、その「力の芽」が「持てるもの」によって忌避される類いのものである一方、「持たざるもの」にとってはもの凄い武器であるときにその「力の芽」は着実に育つ、という判断基準である。”というのはシリコンバレーで仕事をしてきた著者の実感から生まれてきた言葉で興味深い。最後にでてきたIインフラって何? と、まだ良くわからないがそれは追々説明されていくのだと思う。

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)